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井出草平の研究室
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「ひきこもり」の性別

「ひきこもり」の性別比を各調査で比較。「ひきこもり」は男性が7~8割程度というのが各調査を通じて見えてくる。
調査名 男性
『ひきこもりガイドライン』 76.4%
斎藤環の診療データ 82.5%
埼玉県実態調査 79.5%
大分県実態調査 68.7%
KHJ 親の会(2005年) 83.7%
『ひきこもりガイドライン』予備調査 77.1%

1.『ひきこもりガイドライン』

男性が76.4%。『10代・20代を中心とした「ひきこもり」をめぐる地域精神保健活動のガイドライン』より『「社会的ひきこもり」に関する相談・援助状況実態調査』。『ひきこもりガイドライン』は発達障害や精神障害によるひきこもり状態を含む概念として「ひきこもり」を定義している点に注意。

2.斎藤環の診療データ

男性が86%。斎藤環『社会的ひきこもり』に示されている斎藤の所属していた研究室を受診した患者の診療データ。

3.埼玉県実態調査

男性が79.5%。埼玉県健康福祉部『ひきこもり実態調査報告書』(2002年)]でのデータ。この調査の特徴は「ひきこもり」の定義にそう形で診断をしたのちに分析が為されていることである。集められたデータは723件だが、実際に分析に使われているのは精神疾患に関係しそうなものを除いた131件である。この点で非常に信頼の置ける調査である。

4.大分県実態調査

男性が68.7%。大分県精神保健福祉センター『ひきこもりの実態調査報告書』(2004年)でのデータ。この調査の特徴は、「ひきこもり」を思春期・青年期に限定していないところである。最高年齢は73歳であり、45歳以上が5.7%含まれている。実際のところは分からないが、精神障害を原因としたひきこもり、退職によるひきこもり、主婦の引きこもりなどが混在しているのではないかと思われる。

5.KHJ 親の会(2005年)

男性が83.7%。NPO 法人全国引きこもりKHJ 親の会が会員に対して行った『「ひきこもり」の実態に関する調査報告書』より。親の会が持つ性質としては、長期化した例が多くなるというものがある。短期的な「ひきこもり」は親が親の会に到達するまでに解決することが多いということと、親の会そのものが長期化した「ひきこもり」に対処するためのモチベーションとしての役割があるというのがその論拠となる。ただ、性別に関しては、親の会の長期化を抱える傾向とは関連がないので、特に性別比に偏りがあるとは思えない。
参照:徳島大学の境泉洋ウェブページKHJ 親の会『「ひきこもり」の実態に関する調査報告書』

6. 『ひきこもりガイドライン』予備調査

男性が77.1%。東京都多摩地区・横浜市の全14相談機関からのデータ。ひきこもり定義は「ガイドライン定義」であるので、発達障害・精神障害などを含む。
参照:吉田光爾ほか「「社会的ひきこもり」事例における本人と家族の状況に関する調査研究」
参考:井出草平の研究ノート